7世紀、いまから1300年前にここには古代の都市がありました。
その都の名はイシャナプラ。古代中国の文献にもその名が残り、2㎞四方の濠に囲まれた都市の中には、当時2万軒の家があったと描かれています。中国やインド、さらに西の世界からも人々が行き交う国際都市がこの場所にあったのです。
そして今、古代の遺跡と地域の暮らしに惹かれ、1000年の時を超えて、またここに人が集まりはじめています。
1000年以上前の王たちによって、神々のために建てられた寺院群が今も形をとどめています。大きな森と融合し、王のための寺院という役割を終えてひっそりとたたずむその姿に、経てきた時間の厚みをまとっています。
静かな中に生き物のざわめきを感じる森の木陰を歩くと、森の木々の向こうから遺跡たちが顔を見せます。
遺跡を取り巻く森は大切な暮らしの一部。暮らしと遺跡が融け合う世界。
古代と現代が混ざり合う場所。それが、サンボー・プレイ・クック遺跡群です。
アンコール王朝よりもさらに時代をさかのぼる、プレアンコールと呼ばれる時代、この場所では一度大きく芸術の華が開きました。独創的でどことなく親しみがあり、ちょっとかわいらしい「ここにしかないもの」たち。森のなかの遺跡の奥に「彼ら」はひっそりと隠れています。
植物紋の中に隠れた動物たち、台座に現われる怪獣、石に刻まれた古代の文字。アンコール遺跡のような大きさで魅せる迫力はないけれど、目を凝らすとひとつひとつの彫刻やデザインがこちらに語りかけてきます。
古代の都のまわりにも、遺跡の森の木立のなかも、今はみんなの暮らしの一部。
森の中には牛たちとカウベルの音。遺跡へ道は牛車も通り、木立の中から子供たちの元気な声が聞こえてくる。
その時代、時代の人々の暮らしに向き合いながら、1000年以上の月日をここで過ごしてきた遺跡。
暮らしの息づかいが聞こえる。
それがサンボー・プレイ・クック遺跡群のもう一つの魅力です。
サンボー・プレイ・クックの今